以前の記事で、【管理栄養士も知識不足シリーズ①】 ベジタリアン・ヴィーガンダイエットにまとめていますので、まだご覧になっていない方は、先にそちらの記事を読むことをおすすめします
筆者がオーストラリアの大学・大学院で学んでいることを、日本の管理栄養士さんやまた学生さんの役に立てばと、今回は、ベジタリアン・ヴィーガンダイエットの栄養カウンセリングについて触れていきたいと思います。
- 患者さんやクライアントさんがベジタリアンやヴィーガンダイエットを取り入れている
- 患者さんやクライアントさんの宗教上、食事に規制がある
- 患者さんやクライアントさんがベジタリアンやヴィーガン食に興味を持っている
- どのような栄養指導やカウンセリングを行うことが本人へのサポートに繋がるのか?
- 管理栄養士のスキル向上のためにするべきこと。など
医療従事者・管理栄養士が現場ですべきこと/ すべきでないこと
医療従事者・管理栄養士が現場ですべきこと
患者さんやクライアントがベジタリアンだった場合
ベジタリアンダイエットと言っても、一概に同じではありません。人によって、宗教によって、もっと詳細に制限している食べ物もあるため、あくまでも大まかな参考としてください。
その上で、管理栄養士や医療従事者は、患者やクライアントさんの問診や食事記録の確認・栄養指導を行う際に以下の点を確認することが大切です。
- どのようなベジタリアンダイエットを行っているのか?
- 何を制限していて、何をオッケーとしているのか?
- どのくらい継続しているのか?(1年?10年?など)
- 個人的嗜好なのか、国籍や宗教的なものなのか?(聞ける場合)
- サプリメント摂取の有無(あれば、何を補っているか?)など
- 貧血など所見が見られた場合 ベジタリアンダイエットを継続できるような栄養・食事・サプリメントアドバイス
なぜ、詳細なカウンセリングが必要なのか?については、ベジタリアン・ヴィーガンダイエットの健康リスクのページで詳しく説明しています。
医療従事者・管理栄養士が現場ですべきでないこと
患者さんやクライアントがベジタリアンだった場合
まず、前提として、現場では患者やクライアントさんが日本人だけとは限りませんよね。
例えば、外国籍の方にとっては、日本人の価値観や日本人にとっての栄養に関連する健康問題が、彼らにとっても同じとも限りません。同じ日本人であったとしても、人それぞれ性格や見た目が違うように、考え方も違います。
私自身も現場で何度も見てきましたが、日本での医療従事者は、まだまだ外国籍の方に対しての理解や知識不足もあり、日本の価値観に当てはめて栄養指導がとても多いように感じていました。
ですので、特に栄養士・管理栄養士の方は、患者さんやクライアントがベジタリアンやヴィーガンだった場合は、まずは患者さんを受け入れ否定しない!そして、上記のリストに記載したようなことから会話を発展させ、以下の点に気をつけましょう。
- ベジタリアンやヴィーガンを否定する。
- ベジタリアンやヴィーガン=バランスが偏っていると決めつける。
- “ここは日本なので。”と、日本人に合わなさいと言うような言い方をする。
- 貧血などが見られた場合ベジタリアンやヴィーガンダイエットを続けられるような、食事やサプリメント摂取のアドバイスをするべきで、動物性食品を無理やり提案したりすすめたりしない。
知らないことは知らないと言う勇気!
相手の質問に自信を持って答えられない場合
ベジタリアンやヴィーガンについての知識がない場合は、知ったふりをするのではなく、素直に知識不足のことを相手に伝えることが大切です。例えば、
“少し自分の知識不足なので、次回の栄養カウンセリングまでに調べておきますね。”
今日は少し時間が足りないので、後日Eメールしても大丈夫ですか?
“どんな回答をするのが〇〇さんにとって最善か少し検討したいので、回答までにお時間いただけますか?”
など寄り添う姿勢が大切ですよね。そして、全て分野や専門外のことを理解するのは限界があって当然!ですので、わからないことは、わかならないとハッキリ伝えましょう。
管理栄養士も生涯学びの連続なので、曖昧に自信のないことを答えるよりは、専門家として下調べをして相手の質問に合う回答やアドバイスしてあげるのが、プロなのではないかな。と個人的には思います。
※もちろん、その場で回答ができない場合、調べたり資料を作る等で時間がかかるので、そこは残業にならないなど業務の効率を考え工夫しましょう
管理栄養士のスキル向上のためにするべきこと
データや情報収集について
その後、質問内容について調べる際は、言うまでもなく、専門資格を持たない方が書いている、インターネット上にの記事を参考にするのは控えましょう。有力でかつ信頼できるサイトや文献の情報を参考にするのがベスト。
筆者の経験からも、多くの学術文献にアクセスするには、法人契約している場合でも、そのアクセス権限が医師や研究者のみ権限付与で、管理栄養士にないと言うこともあります。個人で高額な年会費を払ったり、または、文献を購入することは、現実的ではないので以下のことを事前に確認しましょう。
- どのような医学文献・学術文献に管理栄養士がアクセスできるのか?またはアクセス権限を持っているのか?法人契約はあるか?などを確認
- もし医師のみアクセスできないようであれば、管理栄養士にもアクセス権限を付与してもらう。
- クライアントさんから質問を多く受けるような立場の管理栄養士(食品企業系)さんは、論文検索できるサイトを契約してもらう、または、部署に予算として落としてもらうなど(企業の規模によりますが、研究機関や食品研究部署でないと、特に上司が医療系専門職でない場合は、そこに予算を落とすことを理解されない場合もあるかもしれません。(筆者の実体験…)
- 学生IDで大学図書館(オンライン図書など)へ無料でアクセスする。
- できない場合は、専門資格を持つ教授の先生に問合せてみる。(※大学機関は、学生の卒論などもあるため、確実に膨大なデータベースにアクセスできるように整っていると思います。)
専門文献をリサーチする
様々な論文を入手するためには、様々な方法があります。個人で調べ物をしたい場合には、有料サイトや法人契約外だとアクセスできないこともあるかと思います。
また、英語の文献を読むのは…と感じる方も多いはずなので、今回は日本の論文検索サイト(データベース)と、個人の調べ物をするには十分かな、というGoogle Scholar も併せて下記に載せておきます。
サイト名 | 言語設定変更機能あり/なし | URL |
National Library of Medicine | ほぼ英語 | https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/ |
Scopus | あり | https://www.sciencedirect.com/ |
Google Scholar: 個人で調べるには◎ | あり | https://scholar.google.com/ |
J-STAGE: 国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) – 日本国内で発行された幅広い分野の文献が無料で閲覧可能。 | 日本語のみ | https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/ |
論文に関わらず、医療者や医療従事者が絶対に!絶対に!するべきではないこと。それは
- 絶対に、自分以外の人が書いた論文の内容や記事を勝手にコピー&ペーストしない!
- 引用したい文は、必ず自分の言葉で言い換える!
- そのまま引用したい文は、必ず引用符(クォーテーションマーク)“”を使い引用元を記載する!
基本的なことですが、ついうっかり。ということもありますし、このくらいなら大丈夫であろう。というのは、特に専門資格のある方は、シビアになった方がいいかなと思います
日本の大学と欧米圏の大学を比較すると、学生時に論文を書いたり・読んだりする回数は明らかに異なりますし、そもそも日本では、学術文献や研究論文を盗用することについての授業や科目がないはずです(卒論のための事前学習ではない)。ですので、深くトレーニングせず、学ばず、卒業後も、なんとなく理解しているようで理解できていないまま、現場に出て行かなくてはならない現実があると思ってます
専門知識がない方が、誰かの記事をそのままコピペしたようなwebページはたくさんあります。専門職からすると、“専門家ではないし、仕方ないよね…”で済まされることも、やはり国家資格をちゃんと持つ管理栄養士やその他の医療職の人は、同じことをするべきではないですよね。
また日本の場合、医療や栄養に関しては誰もが情報発信できて、例え、その情報が信憑性にかけていたとしても、管理栄養士や医療者の専門家が、専門職以外のライターに対して何もできません。まして、栄養士会等が何か対処してくれるわけでもありません。なので、閲覧数の多い、上手くSEO対策できているページが上位に上がってきてしまい、肝心な有力な信頼サイトがトップに上がってこない…なんてこともありますよね。
一般の方が出している情報よりも私たちがしなければいけないことは、エビデンスに基づき中立的な立場で物事を伝える ことであり、信憑性が低い情報を、アクセス向上目的で発信する役目ではありません。
また、世界的な有名な論文や研究は、基本英語です。日本語に絞って情報を得ようとすると、情報量の差は歴然ですし、日本語だけで欲しい情報はなかなか手に入らないのが現実だと思いますが、英語であっても日本語であっても、人の研究や人が書いた記事をそのまま使わないということ。
もし使用したい場合は引用先を記載したり、研究者や大学側に使用目的を伝えた上、引用許可をもらうことが必要です。
まとめ
今回は、クライアントや患者さんが、仮にベジタリアンやヴィーガンだった場合のフォローについて触れました。
管理栄養士と言っても、様々な分野で専門スキルや知識が異なってきます。ですが、一般の方は、そこまでについては深く考えず“管理栄養士だからきっと知っているだろう。”と、質問されるかもしれません。
質問に対して、医学的なエビデンスに基づいた回答ができない・自信がない場合は、ハッキリと“わからない!”と伝えることが大切です。決して恥ずかしいことではなくて、私たち管理栄養士も、日々更新されていく新しい医学情報にフォローしていかなければいけないこと、それはとても大変なんだということを説明する必要もあります。
ようは、国家試験をとって終わり!ではなくて、日本の管理栄養士も自分の専門分野だけでなく、幅の広いナショナルレベルの知識が必要ですし、それには常に新しい情報をキャッチできるようなアンテナを張って、生涯学習が必須ですね
現場で使える栄養学的なメリット・デメリットは、以前の記事を参考にしてください。
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